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製材のJASにはどのような種類がありますか?
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JAS規格制度とは、農林水産大臣が制定した日本農林規格(JAS規格)による検査に合格した製品にJASマークを貼付することを認める制度のことです。その中で、私たち木材業界に関連深いのが、無垢材で「製材」「枠組壁工法構造用製材」のJAS規格です。加工木材では「合板」「フローリング」「集成材」「単板積層材」「構造用パネル」「枠組壁工法構造用たて継ぎ材」のJAS規格があります。
そして、低層(3階建て以下)の公共建築物は原則として木造化を図るという画期的な「公共建築物等における木材の利用促進に関する法律」が、第174回通常国会において成立、平成22年5月26日に公布されました。これにより、建築基準法第46条の木造建築物の規定とJAS構造用製材の基準強度がさらに重要な意味を持つこととなりました。建築基準法第46条の木造建築物の規定で、集成材等(無垢材を含む)を用いて架構を構成する場合、材料としてJASの目視等級区分製材または機械等級区分製材が国土交通省告示で具体的に指定されています。そのため、公共建築物での構造は、原則、JAS構造用製材を使用することが前提になります。 徳島県木材協同組合連合会で認定を行っている「製材」のJAS規格について簡単にご説明します。 品 目 区 分 目視等級区分
構造用製材構造用製材 人工乾燥処理構造用製材 天然乾燥処理用構造製材 保存処理構造用製材 機械等級区分
構造用製材機械等級区分構造用製材 造作用製材 造作用製材 人工乾燥処理製造作用製材 天然乾燥処理製造作用製材 保存処理製造作用製材 下地用製材 下地用製材 人工乾燥処理製下地用製材 天然乾燥処理下地用製材 保存処理下地用製材 広葉樹製材 広葉樹製材 人工乾燥処理製広葉樹製材 天然乾燥処理製広葉樹製材 保存処理製広葉樹製材 枠組壁工法
構造用製材枠組壁工法構造用製材 人工乾燥枠組壁工法構造用製材 保存処理枠組壁工法構造用製材 MSR製材 JAS規格の区分は上表のとおりで、用途によって様々に区分されています。
『構造用製材』はその名のとおり「建築物の構造耐力上主要な部分に使用する針葉樹の製材」のことです。ただし『構造用製材』も大きく2種類あり、木材の強度に影響のある材面の欠点を目視で測定し等級区分する『目視等級区分構造用製材』、機械により非破壊的にヤング係数を測定し等級区分する『機械等級区分構造用製材』があります。一見同じように感じるのですが、それぞれ別の認定となるため『目視等級区分構造用製材』で認定を受けているJAS製材工場で『機械等級区分構造用製材』を格付けすることは出来ません。その反対も出来ません。
『構造用製材』以外で針葉樹を材料とするのは、見栄えを重要視する場所向けの『造作用製材』、外から見えないような場所に使うことが多い『下地用製材』、枠組壁工法建築物(2×4)の構造耐力上構造部材として『枠組壁工法構造用製材』があります。唯一『広葉樹製材』は、広葉樹を主な材料とした製材品全般の規格となります。
それと、JAS製材品は消費者が利用しやすいよう、全国どこでも一定の品質の製品が入手でき、品質も保証されるべく用途別、製品別に項目を定めて規格化が行われています。
なぜJAS製材を使う必要があるのでしょうか?
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製材は、建築基準法第37条及び平12建設省告示第1446号において指定建築材料とされていないため、仕様規定に定めがある場合(建築基準法施行令第46条2)を除き、法令上は構造耐力上主要な部分に用いる製材をJASに適合させる必要はありません。しかし、構造耐力上主要な部分に用いる製材として一定の品質を確保する観点から、原則として、製材を用いる場合は製材のJASに適合する木材(JASに規定する含水率表示SD15又は20)又は国土交通大臣の指定を受けたもの(SD20以下)(以下「製材のJASに適合する木材等」という。)を使います。 次に、公共建築物を計画する場合は木造の公共建築物等の設計指針である『木造計画・設計基準』があります。これは、国土交通省大臣官房庁営繕部が平成23年5月10日に制定・公表したもので、低層の木造公共建築の設計指針となり、「木造計画・設計基準」における製材の規格が関連します。この中で、建築工事に使用する材料について、次のように規定しています。
製材の規格については、原則としてJASに適合するもの又は国土交通大臣の指定を受けたものとする。
ただし、製材のJASに適合する木材等を用いないことができる場合は、次の①から③の制限をすべて満たす場合に限る。
① 構造計算方法による制限
建築基準法施行令第46条第2項等により、法令上、構造耐力上主要な部分である柱及び横架材に対し製材のJASに適合する木材等を用いなければならない場合に該当しないこと
② 個別の自由による制限(以下のアからウのいずれかに該当するもの)
ア.使用量が極小であることイ.工事場所が離島であることウ.特定の製材を用いる必要がある場合であって、製材のJAS に適合する木材等として出荷できない場合であること。
③ 機械的性質による制限(以下のアからウのすべてに該当するもの)ア.製材のJAS規格第6条に規定する曲げ性能(曲げヤング係数)の確認と同等の確認(これと同等の打撃による確認を含む)ができること。曲げヤング係数の目安を表3.3.2.1に示す。ただし、この際に用いることのできる基準強度は、無等級材の基準強度を上限とする。イ.原則として、製材のJAS 規格第5条に規定する含水率の確認ができ、その平均値が20%以下であることが確認できること。ただし、広葉樹を用いる必要がある場合、古材を再利用する場合については、含水率の制限がない計算方法を選択した上で、将来において、部材の収縮、変形等によって支障が生じないような工夫をする場合に限っては、含水率が20%以上の木材を用いることも許容するものとする。ウ.製材のJAS 規格第6条に規定する節、集中節、丸身、貫通割れ、目周り、腐朽、曲がり、狂い及びその他の欠点について、品質の基準を満たすことが確認できること。
なお、製材のJAS に適合する木材等とすること又は上記の①~③の制限をすべて満たすことについては、許容応力度計算又はそれ以上の高度な計算を行う場合について適用するが、住宅用途の場合や平屋建ての場合において許容応力度計算を行わない四号建物についても、製材のJAS に適合する木材等とすること又は上記①~③の制限をすべて満たすことを適用することが望ましい。
最後に公共建築木造工事標準仕様(平成25年度版)における軸組構法工事に係る材料のうち製材について次のように規定しています。
① 目視等級区分構造用製材
目視等級区分構造用製材は、「製材の日本農林規格」第5条「目視等級区分構造用製材の規格」の乾燥処理を施した木材とし、樹種、寸法、構造材の種類、等級及び含水率は、特記による。なお、その基準強度は、「木材の基準強度Fc,Ft,Fb及びFsを定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1452号。)第一号による。
② 機械等級区分構造用製材
機械等級区分構造用製材は、「製材の日本農林規格」第6条「機械等級区分構造用製材の規格」の乾燥処理を施した木材とし、樹種、寸法、含水率及び曲げ性能等級は、特記による。また、見え掛り部に用いる場合で、節、丸身貫通割れ及び曲がりの規定を必要とするものの適用、等級等は、特記による。特記がなければ、「機械等級区分構造用製材の規格」による。なお、その基準強度は、告示第1452号第二号による。
③ 広葉樹製材
④ 無等級材(①から③まで及び⑥以外の製材で日本農林規格に定められていない木材。なお、⑤による製材は含まない。)
無等級材は、乾燥処理を施した木材とし、寸法、樹種、含水率及び材面の品質(節、集中節、丸身、貫通割れ、目まわり、腐朽、曲がり、狂い及びその他の欠点)は、特記による。加工前に全数について、含水率、目視による材の欠点等を確認し、報告書を監督職員に提出する。含水率の測定は、〔J※含水率の測定〕による。なお、その基準強度は、告示第1452号第六号により、加工前に構造耐力上主要な部分である柱及び横架材全数について、縦振動ヤング係数を測定し、基準強度を満たしていることを確認し、報告書を監督職員に提出する。測定の対象部材は、特記による。
⑤ 国土交通大臣の指定を受けたもので基準強度の数値を指定された製材
国土交通大臣の指定を受けたもので基準強度の数値を指定された製材は、告示第1425号第七号により、国土交通大臣が指定した木材で、乾燥処理を施した木材とし、含水率は、特記による。
⑥ 下地用製材
※含水率の測定
木材の現場における含水率の測定は、次による。
(1)測定は、高周波水分計又は電気抵抗式水分計による。
(2)測定箇所は、1本の製材の異なる2面について、両木口から300㎜以上離れた2か所及び中央部1箇所とし、計6箇所とする。
(3)含水率は、6箇所の平均値とする。
(4)含水率測定結果の判定は、平均値が所定の含水率以下の場合、合格とする。
県産材の構造材を使いたい場合、どのようなことに気を付けたら良いのでしょうか?
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県内でJAS認定工場は12社(H26.2.14現在)ありますが、全て『目視等級区分構造用製材』区分で認定されています。
よって「120×240×4,000㎜の梁を甲種Ⅱの2級で20本、120×120×3,000㎜の柱を乙種Ⅰの3級で30本揃えて欲しい。」という要望には応えることは出来ますが、「120×240×4,000㎜の梁をE90で10本、120×120×3,000㎜の柱をSD15で10本揃えて欲しい。」となると、E90は『機械等級区分構造用製材』区分の認定が、SD15は人工乾燥処理の認定が必要となります。
また、平成25年度後半のような消費税駆け込み時は特殊ですが、通常は6~8月の梅雨から夏にかけて原木の出材は減少し(原木が虫害にあいやすいため)、9月の秋以降から出材が本格的になってきます。よって、夏時期に材料を揃えることは難しいことが多いです。それと、長さが6m以上や150㎜以上の大きな断面の構造材を求める場合、また、500本以上と大量に必要、もしくは2週間で揃えるなどという短納期で揃える場合も、計画的に原木からの材料調達を行わない限り対応は不可能となります。
これらのことをご理解の上、求められている木材の仕様を明確にし、出来るだけ早く取引先の木材業者に相談してください。
機械等級区分構造用製材にある「E70」や「ヤング係数」について教えてください
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「E70」は製材のJAS機械等級を表します。JAS機械等級は(一社)全国木材検査・研究協会により認定されている機械等級区分装置によって測定される「(曲げ)ヤング係数」をパラメータとして等級区分されます。「(曲げ)ヤング係数」は、材料に荷重を負荷した際の「変形しにくさ」を表す物性値で、ヤング率や弾性率(係数)とも呼ばれます。
一般にヤング係数は木材の静的曲げ、縦圧縮・縦引張り試験(材料試験)時に得られる荷重・変形曲線から算出される係数で、建築・土木分野等では、たわみ制限を伴った構造設計を行う場合に不可欠な値です。
県産材の特徴とは?
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徳島県産杉は「徳島すぎ」としてブランド化されており、杉の持つ「軽くて柔らかく、加工性に優れる」という杉本来の特徴に加え、徳島の急峻かつ日本でも有数の多雨地帯で成長するため、粘り強さと腐朽などへの耐久性をも兼ね備えています。
赤身がピンク色で美しいものが多いのも特徴です。
それ以外では桧や松も県内で生育していますが、特殊な寸法の材料を揃えたり、まとまった数量を揃えるとなると厳しいのが実状です。
今回のJAS改正の要点を教えてください
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製材の日本農林規格(JAS規格)は、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律第十条により、規格の改正が行われ、平成25年6月12日に農林水産省告示第1920号として告示され、平成25年9月10日より施行されました。 改正の内容につきましては以下の通りです。
① 乾燥処理に関する事項
ア 乾燥処理に天然乾燥処理の追加
・天然乾燥処理の追加に伴い乾燥処理、人工乾燥処理の定義の追加、またそれに関わる記載事項を変更する。
イ 含水率に天然乾燥の基準を追加
ウ 仕上げ材および未仕上げ材の定義の明確化
・天然乾燥処理の含水率基準を追加することに伴い、「仕上げ材」及び「未仕上げ材」は、人工乾燥処理後の材に適用することを明らかにする。
② 含水率試験に関する事項
ア 天然乾燥処理を施した製材の、含水率試験の方法の規定を追加
イ 人工乾燥処理を施した製材の含水率試験の方法を一部変更
ウ 乾燥温度を103±2℃とし、恒量の確認のための時間を、6時間以上と改正
③ 「構造用Ⅰ」、「構造用Ⅱ」の名称を、「甲種Ⅰ」、「甲種Ⅱ」に変更
④ 造作用製材のインサイジングの強度に関する規定を削除
⑤ 「耐久性D1」、「耐久性D2」を「心材の耐久性D1」、「心材の耐久性D2」の表記に変更
⑥ 目視等級区分構造用製材の曲がりの基準から、たいこ材を除外(機械等級区分構造用製材も同様)
⑦ 寸法の改正に関する事項
ア 規定寸法の廃止(構造用製材の仕上げ材)
イ 表示寸法との差の区分において、「未乾燥材」を「人工乾燥処理を施していないもの」に変更
ウ 寸法基準の緩和
・仕上げ材および未仕上げ材の表示寸法との差の内、プラスの差を0.5mm拡大する(構造用製材)
エ 寸法区分の追加
・構造用製材の「人工乾燥処理を施していないもの」の寸法区分に、105mm以上を追加する。
・人工乾燥処理製材の未仕上げ材の寸法区分に105mm以上を追加し、3区分とする。
⑧ 表示事項、表示の方法の改正
ア 「土台用である旨の表示がしてあるもの」の基準の削除
イ 構造用製材の等級表示(★)の、色の制限の削除
ウ 束ごとに表示を出来る場合を表記
⑨ 欠点の測定方法の整理及び図示
ア 節の径及び径比について
木口の短辺が36mm未満の甲種Ⅰの節の径比の項より、広い材面の両面の「節の径比の平均」を削除し、最大値とする。
⑩ 保存処理薬剤、分析方法の追加と改正
ア 新たな保存処理薬剤(AZNA)の追加、吸収量の基準、分析方法の追加
イ DMPAPの分析方法の改正及び、分光光度法を追加
ウ CUAZの有効成分のシプロコナゾールのHPLCによる分析方法の改正
エ 生長錐の径の変更
県産材と木材センターの関係を教えてください
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徳島県木材センター協同組合は木材市売を主とする株式会社ゲンボク、大一木材株式会社、株式会社徳島中央木材市場、丸幸産業株式会社の4社で組織された中小企業法に基づく協同組合です。
徳島県内の製材業者は中小零細企業が多いため、1社では多くの注文に対応できないことがあります。そのため、徳島県木材センター協同組合は県内外の製材業者の製品を幅広く取り扱っていることから、用途に応じて県産材製品を調達することが可能です。
製材品の仕様や数量によっては調達するのに時間が掛かったり、場合によっては不可能な場合もありますのでなるべく早めにご相談下さい。
参考文献等:新しい製材の日本農林規格並びに改正の要点及び解説
(一般社団法人全国木材検査・研究協会)
JAS制度の手引(社団法人日本農林規格協会)
一般社団法人全国木材検査・研究協会WEB